市区町村別データをもとに、出店候補エリアの仮説を整理する

PriceAnalyzer

2026/06/26

PriceAnalyzer 活用事例

市区町村別データをもとに、出店候補エリアの仮説を整理する

この記事では、出店候補エリアの仮説を整理する方法をご紹介します。

PriceAnalyzerで整備した市区町村別データをもとに、出店候補エリアの初期仮説を整理する方法をご紹介します。具体的には、生成AIを活用しながら、①有望市場の抽出 → ②需要タイプの分類 → ③自社条件での再絞り込み、という3ステップで候補地を整理していきます。

重要なのは、生成AIが単独で市場分析を行うのではなく、PriceAnalyzerで比較可能な形に整備したデータを前提に、人間が条件を設計し、生成AIはその整理や要約を支援する形で活用する点です。

はじめに:データは揃った。次に何を見るか?

PriceAnalyzerを使うと、市区町村別の宿泊価格・稼働率・外国人比率を比較し、出店候補地を横並びで把握できるようになります。

一方、実務ではその先の工程である「どの条件で候補地を絞り込むか」「抽出した市場をどう解釈するか」で時間がかかることがあります。

たとえば、平日・土日ともに価格が高く、稼働率も高い自治体が複数見つかったとしても、それがインバウンド需要に支えられた市場なのか、国内観光やビジネス需要で成立している市場なのか、あるいは自社の想定価格帯や出店タイプに合うのかまでは、データを見ただけではすぐに整理できないこともあります。

本記事では、出店候補地の一次スクリーニングで作成したデータをもとに、こうした初期仮説を生成AIで整理する流れをご紹介します。

※ 本記事はPriceAnalyzer活用事例「出店候補エリアの一次スクリーニングを短時間で実現する」にて作成したデータを、  効率的に分析いただく方法として記載しています。※ 2026年6月時点における生成AIの活用事例となる点、あらかじめご了承ください。

使用データと分析の概要

■ 使用したデータ

以下2種類のデータを「データ集約」シートに統合して使用しました。

データ取得元主な指標
データ①13.過去価格(詳細検索)市区町村別・平日/土日別の宿泊価格中央値 対象:1,501自治体
データ②90.各種統計データ客室稼働率・外国人比率(宿泊旅行統計調査ベース) 対象:234自治体

※集計期間:2025年6月〜2026年5月。稼働率・外国人比率は宿泊旅行統計調査(観光庁)に基づくデータで、対象自治体は234自治体に限られます。対象外の自治体については都道府県平均を参考値として用いる、あるいは個別調査を組み合わせることで、候補地比較を進めることができます。

■ スクリーニングの考え方

以下の3指標を掛け合わせることで、有望な出店候補地を絞り込みます。

指標着目するポイント高い場合の意味
宿泊価格中央値(平日)平日の価格水準ビジネス・通年需要が強い
宿泊価格中央値(土日)週末の価格水準観光・レジャー需要が強い
客室稼働率客室の埋まり具合市場全体の需要が旺盛で供給が追いついていない可能性

「平日・土日ともに価格中央値が高く、さらに稼働率も高い自治体」は、需要が旺盛にもかかわらず供給が追いついていない可能性があり、出店機会として注目できます。

生成AIへの投入―プロンプトを分けることがポイント

人間が分析の枠組みと条件を設計し、整理・要約の作業を生成AIに担わせることで、短時間で仮説整理を進めることができます。以下に3ステップのプロンプト例と、AIが整理した出力(抜粋)をご紹介します。

ステップ人間が設計すること生成AIに任せること
STEP1 有望市場の抽出平日価格・土日価格・稼働率の閾値設定抽出結果の要約、上位市場の特徴整理
STEP2 市場タイプの分類外国人比率や価格差の分類基準設定自治体のタイプ分け、特徴コメント
STEP3 条件の再絞り込み想定価格帯・外国人比率などの条件設定条件合致自治体の整理、比較コメント

■ STEP 1:有望市場の抽出

まず、「平日価格・土日価格・稼働率がいずれも高い自治体」を条件フィルタで抽出します。生成AIは、この抽出結果をもとに、どのような市場が上位に入っているかを要約・整理する役割を担います。

【閾値の設定について】各閾値は、対象自治体の分布をもとに算出した上位25%の境界値です。平日中央値 21,000円 / 土日中央値 24,287円 / 客室稼働率 72.9% がそれぞれの境界値となります。【外国人比率について】外国人比率はSTEP 1の抽出条件には含めていませんが、STEP 2での市場タイプ分類に使用するため、一覧表には併せて表示します。
📝 プロンプト例(STEP 1)添付の「データ集約」シートは、市区町村別に整理した宿泊市場データです。以下の3条件をすべて満たす自治体を抽出し、一覧で出力してください。
  ・ 平日宿泊価格中央値:21,000円以上(全自治体の上位25%)  ・ 土日宿泊価格中央値:24,287円以上(全自治体の上位25%)  ・ 客室稼働率:72.9%以上(稼働率データあり234自治体の上位25%)
結果は「自治体名・平日中央値・土日中央値・稼働率・外国人比率」の表形式で、稼働率の高い順に並べてください。

※上位25%を境界値としたのは、外れ値の影響を抑えながら市場強度の高い自治体を抽出するための便宜的な設定です。

分析目的に応じて、生成AIに分布を解析させて閾値を再設定することもできます。

条件に基づいて抽出した14自治体を、生成AIで整理・要約した結果(抜粋)平日中央値・土日中央値・稼働率の3条件でフィルタリングしたところ、該当自治体は14件でした。生成AIには、この一覧をもとに市場の特徴を要約させています。
東京都心の複数区・札幌市・京都市のような大都市・観光都市に加え、南小国町・草津町・鎌倉市・出雲市・尾道市といった地方の高単価市場も上位に入りました。
  浦安市(千葉)    平日26,322円  土日37,624円  稼働率86.5%  外国人比率14.9%  渋谷区(東京)    平日35,857円  土日43,949円  稼働率84.1%  外国人比率85.9%  札幌市(北海道)  平日21,306円  土日29,235円  稼働率81.4%  外国人比率38.4%  中央区(東京)    平日23,017円  土日30,689円  稼働率80.9%  外国人比率70.2%  新宿区(東京)    平日23,283円  土日31,083円  稼働率79.6%  外国人比率72.5%  出雲市(島根)    平日22,000円  土日25,951円  稼働率77.8%  外国人比率 1.9%  墨田区(東京)    平日23,943円  土日30,599円  稼働率77.4%  外国人比率53.5%  木更津市(千葉)  平日21,760円  土日26,800円  稼働率77.0%  外国人比率 6.5%  港区(東京)      平日24,630円  土日31,485円  稼働率76.9%  外国人比率59.6%  鎌倉市(神奈川)  平日28,608円  土日33,640円  稼働率75.2%  外国人比率26.1%  南小国町(熊本)  平日44,000円  土日47,343円  稼働率74.6%  外国人比率31.0%  京都市(京都)    平日25,840円  土日30,184円  稼働率74.6%  外国人比率53.9%  尾道市(広島)    平日23,147円  土日25,000円  稼働率74.0%  外国人比率14.9%  草津町(群馬)    平日28,201円  土日31,959円  稼働率73.3%  外国人比率 7.2%

STEP1で見えてくること

今回の抽出結果を見ると、上位市場は東京都心・札幌市・京都市といった大都市・観光都市に集中する一方、南小国町・草津町・出雲市・尾道市のような地方市場も含まれました。

つまり、高単価・高稼働の市場は必ずしも大都市に限られず、国内需要を軸に成立している地方市場も、同じ土俵で比較対象にできることが分かります。次に見るべきなのは、これらの市場がインバウンド需要に支えられているのか、それとも国内需要中心で成立しているのかという需要構造の違いです。

■ STEP 2:市場タイプの分類

抽出した14自治体を需要構造で分類します。以下の分類は生成AIに自由に名付けさせたものではなく、外国人比率と平日・土日の価格差をもとに、あらかじめ人間が設定した基準で整理しています。生成AIには、その基準に沿って自治体を分類し、特徴を要約させています。

なお、ここでの市場タイプ分類は厳密な統計モデルではなく、出店候補地の一次スクリーニングを目的とした実務上の便宜的な分類です。「外国人需要の強さ」と「平日・土日の需要構造の違い」を短時間で把握するための整理であり、平日・土日の価格差の閾値は分析目的や自社の出店仮説に応じて調整可能です。

【分類の境界値について】外国人比率18.4%は、今回利用した稼働率データのある234自治体全体における、外国人比率の上位25%の境界値です。本記事では、この値を「インバウンド需要が相対的に強い市場」の目安として利用しました。
📝 プロンプト例(STEP 2)先ほど抽出した14自治体を、以下の基準で分類してください。
  タイプA(インバウンド総合型):外国人比率18.4%以上    ※18.4%=稼働率データあり234自治体の外国人比率の上位25%の境界値  タイプB(国内総合型)        :外国人比率18.4%未満、平日・土日の価格差が小さい  タイプC(観光特化型)        :外国人比率18.4%未満、土日中央値が平日中央値より20%以上高い
各タイプの自治体一覧と、需要特性を一文でコメントしてください。
人間が設定した分類基準に沿って生成AIが整理した結果(抜粋)設定した基準に沿って14自治体を3タイプに分類しました。
【タイプA:インバウンド総合型(9自治体)】  渋谷区、新宿区、中央区、墨田区、港区(東京)  札幌市(北海道)、鎌倉市(神奈川)、南小国町(熊本)、京都市(京都)  → 外国人比率が高く、訪日外国人と国内客の両方を取り込む市場。    渋谷区は外国人比率85.9%で、14件の中で最もインバウンド集積が高い。
【タイプB:国内総合型(3自治体)】  出雲市(島根)、草津町(群馬)、尾道市(広島)  → 外国人比率は低いものの、平日・土日ともに高単価・高稼働を維持。    インバウンドの影響を受けにくい、国内需要が安定した市場。
【タイプC:観光特化型(2自治体)】  浦安市(千葉)、木更津市(千葉)  → 土日価格が平日を大幅に上回り(浦安市:+11,302円)、週末・レジャー需要が主体。
タイプ平日価格土日価格需要の特徴想定される出店タイプ
A:インバウンド総合型訪日外国人+国内客の両需要総合型・インバウンド対応ホテル
B:国内総合型国内ビジネス・観光需要が安定ビジネスホテル・シティホテル
C:観光特化型週末・レジャー需要が主体リゾート・観光ホテル

■ STEP 3(応用):条件の再絞り込み(価格帯を絞ったスクリーニング)

STEP 1〜2で有望市場の全体像を把握したら、自社が想定する価格帯や需要条件に絞り込みます。「競合対象を2〜3万円台のホテルに限定したい」「インバウンド需要が一定程度見込めるエリアを優先したい」といった場合に有効です。

📝 プロンプト例(STEP 3)先ほど分類した14自治体について、さらに以下の条件を加えて絞り込んでください。
  ・ 平日中央値:20,000〜35,000円(自社の想定価格帯)  ・ 外国人比率:10%以上(インバウンド需要が一定程度見込めるエリア)
条件に合致した自治体のみを稼働率の高い順に並べ、それぞれの市場特性を一文でコメントしてください。
設定した条件でさらに絞り込んだ結果(抜粋)条件(平日20,000〜35,000円 かつ 外国人比率10%以上)を満たす自治体は9件です。以下は、設定した条件で抽出された自治体に対して、生成AIが市場特性を要約したコメント例です。
  浦安市(千葉)    平日26,322円  土日37,624円  稼働率86.5%  外国人比率14.9%    → 土日需要が極めて強く高稼働。週末特化型の需要構造に適した出店を検討したい市場。  札幌市(北海道)  平日21,306円  土日29,235円  稼働率81.4%  外国人比率38.4%    → 道内最大市場。訪日外国人需要が拡大しており、インバウンド対応の需要が大きい。  中央区(東京)    平日23,017円  土日30,689円  稼働率80.9%  外国人比率70.2%    → 外国人比率70%超と突出して高く、稼働も安定。高収益が見込みやすい都市型市場。  新宿区(東京)    平日23,283円  土日31,083円  稼働率79.6%  外国人比率72.5%    → 外国人観光客の集積が極めて高く、稼働も安定した巨大市場。  墨田区(東京)    平日23,943円  土日30,599円  稼働率77.4%  外国人比率53.5%    → 浅草・スカイツリーを核としたインバウンド需要が支える市場。  港区(東京)      平日24,630円  土日31,485円  稼働率76.9%  外国人比率59.6%    → ビジネス×インバウンドのハイブリッド需要。高単価帯でも稼働が高い。  鎌倉市(神奈川)  平日28,608円  土日33,640円  稼働率75.2%  外国人比率26.1%    → 観光地でありながら平日需要も強い。高単価が成立しやすい市場。  京都市(京都)    平日25,840円  土日30,184円  稼働率74.6%  外国人比率53.9%    → 世界的な観光都市。インバウンド・国内ともに需要が旺盛で高稼働が持続。  尾道市(広島)    平日23,147円  土日25,000円  稼働率74.0%  外国人比率14.9%    → 地方観光地ながら安定した高稼働。比較的競争が少なく参入余地の仮説が立てやすい。

このような絞り込みは、生成AI単体では実行できません。PriceAnalyzer上で、自治体別の宿泊価格・稼働率・外国人比率を比較可能な形で整備しているからこそ、自社の想定価格帯や需要条件に応じたスクリーニングを短時間で行うことができるのです。

なお、本記事の手法は「どの自治体を次に詳しく見るべきか」を絞り込む一次スクリーニングを目的としています。競合ホテルの供給量やブランド構成、アクセス条件、再開発計画、用地取得の可能性といった要素は含んでいないため、最終的な出店判断には別途の調査が必要です。導き出した仮説をたたき台に、競合調査やアクセス条件の確認など次のステップへ進めてください。

生成AIで整理できること、できないこと

生成AIで整理できることまだ判断できないこと
・3指標による有望自治体の一次抽出 ・需要タイプの分類(インバウンド型/国内型/観光型) ・価格帯を絞った条件フィルタリング ・各自治体の市場特性コメントのたたき台作成・競合施設の供給量・ブランド構成 ・土地・建物の取得可否とコスト ・再開発計画・行政施策の動向 ・最終的な出店可否の判断
お客様の声「PriceAnalyzerで市区町村別の宿泊価格や稼働率をまとめられるようになり、出店候補エリアの比較まではすぐできるようになりました。 一方で、データが揃った後に、どの切り口で候補地を絞り込むかには時間がかかっていました。 生成AIを併用することで、初期仮説の整理までを短時間で進められるようになったと感じています。」 ― ホテル開発担当者様

まとめ

PriceAnalyzerで整備した自治体別の宿泊価格データと宿泊旅行統計調査の自治体別の稼働率・外国人比率データをもとに、生成AIを併用することで、

といった初期仮説の整理が簡単に進めていただけます。

重要なのは、生成AIが単独で市場分析を行っているわけではないという点です。

PriceAnalyzerでは、市区町村別の宿泊価格データに加え、稼働率・外国人比率などを組み合わせながら、出店候補地の一次スクリーニングや仮説整理を進めていただけます。

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