市場構造から価格を設計する、
レベニューマネジメント
日々の競合価格を追いかけるだけでなく、市場構造をあらかじめ理解して価格レンジを“設計”しておく ——
それが「Forward Revenue Management」という考え方です。
このページでは、曜日別の市場構造を可視化しながら、収益の取りこぼしを防ぐ運用の考え方をご紹介します。
全国平均では水曜日が安い。
伊豆でも同じなのか?
全国平均を見ると、水曜日の宿泊単価が最も低くなる傾向があります。
ところが、伊豆エリアでは同じ動きにはなっていません。
伊豆では火曜日が最も低く、水曜・木曜もほぼ同水準です。
- 全国
- 伊豆エリア
この背景には、曜日ごとの需要差だけでなく、旅館の定休日、販売在庫の出方、連泊需要、週末前の需要形成など、地域特有の需給構造が影響している可能性があります。
同じ「平日」でも、需給の出方は違う
火曜・水曜・木曜は同じ「平日」であっても、需要や供給の出方が異なる可能性があります。
単に「平日」という括りで一律価格を設定・販売していると、こうした構造を活かしづらくなります。
多くのホテルで
見られるパターン
多くのホテルのRM業務は、以下のような流れになっていることが多いようです。
毎朝、競合価格を確認する
残室数を見て、値上げ・値下げを判断する
翌日も同じ作業を繰り返す
これは 「Reactive RM(日々の価格をコントロールする運用)」 と呼ばれる考え方で、現場での即応力という意味では有効な手法のひとつです。
一方で、「未来の価格を事前に設計しておく」 というアプローチもあります。
RMの2つの考え方
Reactive RM
日々の価格をコントロール
- 今日の予約状況・競合価格を見て価格を動かす
- 市場の変化にその都度対応する
- 現場判断のスピードが求められる
Forward RM
未来の価格を設計する
- 市場構造を分析し、あらかじめ価格レンジを設計しておく
- 四半期ごとの戦略計画をベースに動く
- 計画との差異が出た時に調整する
4P(Product / Price / Promotion / Place)との関係性
| Reactive RM | Forward RM | |
|---|---|---|
| Product | △現在の商品・プランの販売調整 | ○商品・プラン設計 |
| Price | ○価格変更が中心 | ○価格レンジ・価格戦略 |
| Promotion | △直前対応になりやすい | ○事前の販促設計 |
| Place | △現在の販売チャネル対応 | ○販売チャネル設計 |
※○△は戦略の実行しやすさを表しています。
| Reactive RM | Forward RM | |
|---|---|---|
| 時間軸 | 直近 | 将来 |
| 主な問い | 今どう調整するか | 将来どう売るか |
Reactive RMは、今日・明日など直近の予約状況や市場変化に対応する考え方です。短期で変更しやすいPriceが主な調整手段になりやすく、日々の価格変更を中心とした運用になりやすい特徴があります。
Forward RMは、数週間・数か月先の需要を見据えて、事前に販売方針を設計する考え方です。時間的な余裕があるため、Priceだけでなく、Product・Promotion・Placeを含めて、どの需要をどのように取り込むかを検討できます。
どちらが正しいというわけではなく、両方を組み合わせることで、より安定した価格運営につながるという考え方です。
短期の市場変化にはReactive RM、将来の需要設計にはForward RMというように、時間軸の違いによって使い分ける考え方です。
外資系チェーンや大手ホテルグループでは、Forward RMを上流に置いた運営 が多く見られます。
あなたのホテルのRMは
今どのステージですか?
| レベル | 状態 | 特徴 |
|---|---|---|
| Level 1 | 勘・日次調整 | OTA目視確認、その場限りの価格変更 |
| Level 2 | 市場データRM | 競合・市場・在庫の可視化、曜日別把握 |
| Level 3 ★ | 構造RM(Forward RM) | 価格レンジ設計・四半期RM計画の体系化 |
| Level 4 | 経営・投資・ポートフォリオRM | 複数施設最適化、マクロ分析、投資判断支援 |
多くのホテルは、Level 1〜2の段階でRM業務が完結していることが多い印象です。
Forward RMの考え方は
シンプルです
難しく思えるかもしれませんが、基本的な考え方はシンプルです。
火から木曜は需要が弱めになりやすい
弱気のレンジを事前に設定、連泊への対応を強化
地域の外国人比率が高まっている
Booking.comなど海外OTAの露出を事前に強化
イベント日は需要が高まりやすい
特別戦略を前もって組んでおく
特定曜日だけ競合在庫が減る
競合在庫が減る前提での価格を事前に設定しておく
こうした市場の特性を把握し、事前に設計してサイトコントローラー等に設定しておくというアプローチです。
「わかってはいるけど体系化できていない」 という状態が、日々の調整に戻ってしまう主な原因のひとつと考えられます。
実務の流れ(一例)
STEP1
市場構造を把握する
自社実績・競合価格・市場供給・イベント情報の整理
STEP2
価格レンジを設計する
曜日別価格戦略・連泊戦略・販売方針の設計
STEP3
販売システムへ反映する
サイトコントローラーに設定・反映
STEP4
差異を確認し補正する
Booking Curveとの差異確認・市場変化への対応
Price Analyzerの役割
Price Analyzerは、競合価格を見るためだけのツールではありません。
市場構造を可視化し、Forward RMの実行をご支援するツールです。
「Strategic RM(戦略)」
「Tactical RM(戦術)」との違い
本記事で紹介した「Forward RM」「Reactive RM」は、グローバルRM理論で用いられる 「Strategic(戦略)」「Tactical(戦術)」 の枠組みを、日本のホテル・旅館の実務に合わせて再定義したものです。
海外チェーンが採用するRM手法を、現場で実践しやすい形に整理しています。
最後に
RMを「日々の価格調整」だけで捉えるのではなく、
将来の販売戦略を設計し、その計画を日々の運用で調整するものへ転換する。
これがForward RMの出発点です。
競合価格を追い続けるスタイルを否定するわけではありません。
重要なのは、競合価格の変化に反応する前に、自社がどのような市場構造の中で販売しているのかを理解しておくことです。
お問い合わせ・資料請求
各種サービスについてのご相談
その他お問い合わせはこちら
観光向けサービス・調査サービスの
資料ダウンロードはこちら