AIを品質管理に活用【第5回AI時代の資料作成】
2026/08/26
営業資料の品質を上げるのは、人だけではない
前回のおさらい
前回『AI×型(テンプレート)で営業担当でなくても営業資料が作れる時代へ【第4回AI時代の資料作成】』までは、「AIが作る → 人がチェックし仕上げる」という流れで営業資料を作成してきました。AIが一定水準の土台を作ることで、営業担当者以外でもテンプレートを頼りに不足項目を見つけ、資料改善に参加できることをご紹介しました。
今回は、AIに営業資料を作らせるだけでなく、AI自身に成果物をチェックさせることで品質を高められるかを検証します。
レビュー1:指示書の段階でチェックする
下記手順で営業資料を作成しています。
Step1
- MarketAnalyzerの紹介ページを解析し、①課題 ②差別化ポイント ③導入効果 ④対象顧客を抽出する
- テンプレートライブラリの中から8枚を選び、各ページの各枠に入れる文言を、要約せずそのまま配置できる形まで具体化する
Step2
- その指示書をPowerPoint Copilotに渡し、51枚目(目次等含むため)の後ろに8枚を追加させる
Step3
- Step2の内容を人間がチェックする
第4回までで作成していた資料では、Step1とStep2の間に人間によるチェックは入れていません。
レビュー1では、Step1の後に、CopilotがStep2の作業指示として第3回で使用する8枚構成の指示書と、元になったMarketAnalyzerの紹介ページを複数のAIに読ませ、「抜け漏れがあれば指摘してほしい」と依頼しました。
チェックには、Step1を担当したClaudeとは別に、ChatGPT・Gemini・Copilotを利用しました。
以下のURLを分析し、営業資料を作成しようと思います。
https://esurvey.co.jp/tourism/market-analyzer
すでに、このページの内容をもとに8枚構成の指示書を作成しました。
下記がその指示書です。
─────────────────────────
「PowerPoint_スライドテンプレート_20260807.pptx」の51枚目の後ろに、
以下の指示に従って8枚のスライドを追加してください。
各ページで指定するテンプレート番号のレイアウト・デザインをそのまま使い、
指定したテキスト・タイトル・グラフを、指定した枠にそのまま配置してください。
文言のリライトや要約、追加の装飾は行わないでください。
グラフや表など、テキスト以外の要素についても、指定がある場合は必ず反映してください。
【追加P1】参考テンプレート:51枚目(F)コンセプトシート)
ページタイトル:MarketAnalyzer
「PowerPoint_スライドテンプレート_20260807.pptx」の51枚目の後ろに、
以下の指示に従って8枚のスライドを追加してください。
各ページで指定するテンプレート番号のレイアウト・デザインをそのまま使い、
指定したテキスト・タイトル・グラフを、指定した枠にそのまま配置してください。
文言のリライトや要約、追加の装飾は行わないでください。
グラフや表など、テキスト以外の要素についても、指定がある場合は必ず反映してください。
【追加P1】参考テンプレート:51枚目(F)コンセプトシート)
ページタイトル:MarketAnalyzer
CONCEPT見出し:MARKET ANALYZER
キャッチコピー:「データ加工の負担をなくし、確かなデータに基づく意思決定を支える」
VISION:「すべてのホテル投資・運用判断が、勘や手作業ではなく、確かなデータに基づいて行われる世界へ。」
WHO(誰に):投資判断・運用戦略を担う担当者(運用代行・デベロッパー・アセットマネジメント)
WHAT(何を):市場分析・宿泊施設リサーチシステム「MarketAnalyzer」
HOW(どう提供):主要OTA・公的統計データを自動収集し、目的別ダッシュボードで提供
VALUE(どんな価値):データ加工の時間削減/投資戦略の検討に集中できる環境
【追加P2】参考テンプレート:35枚目(F)課題→原因→対策)
ページタイトル:手作業でのデータ分析には限界がある
課題(3行):
・他社システムでは10数件のデータ取得にCSVダウンロード+Excel加工で半日かかる
・公的統計データは形式がバラバラで、エリア集約だけで毎月2〜3人日かかる
・分析基準が担当者ごとに異なり、判断の再現性が保てない
原因(3行):
・複数OTA・複数媒体のデータを手作業で集約している
・国の統計・REIT公表データの形式が統一されていない
・ダッシュボードが標準化されておらず、確認作業が属人的になっている
対策(3行):
・MarketAnalyzerが主要OTAデータを自動収集・統合
・公的統計データを都道府県・市区町村別に自動加工
・目的別ダッシュボードで分析基準を統一
【追加P3】参考テンプレート:19枚目(C)比較型)※5行すべて使用
ページタイトル:従来のやり方 vs MarketAnalyzer
評価項目/自社(MarketAnalyzer)/他社(手作業)
データ収集の手間/○ 条件切替のみ/× CSV+Excel加工に半日
エリア別集計/○ 自動加工/× 毎月2〜3人日
確認スピード/○ 数秒/△ 数分〜数時間
分析基準の統一/○ ダッシュボードで統一/× 担当者に依存
公的統計データ連携/○ 標準搭載/△ 個別対応が必要
【追加P4】参考テンプレート:8枚目(A)3カラム)
ページタイトル:MarketAnalyzerの主な機能
項目A:主要OTAデータの網羅
・主要OTAの価格・空室データを継続収集
・検索条件を切り替えるだけで最新情報を取得
・CSVダウンロード/Excel加工が不要に
・複数OTAを横断して比較可能
項目B:稼働率・需要動向の推定
・価格と在庫状況から競合ホテルの稼働率を推定
・需要の山谷やイベント時の動きも可視化
・競合の需要状況をリアルタイムに把握
・エリア・ホテル単位で確認可能
項目C:公的統計データの自動加工
・国勢調査・REIT公表データ等を自動集計
・エリア別集約に要していた月2〜3人日を削減
・分析基準を社内で統一
・都道府県・市区町村単位に対応
【追加P5】参考テンプレート:22枚目(D)1カラム図表型)
ページタイトル:目的別ダッシュボード
グラフタイトル:エリア平均価格の推移(指数、23年Q1=100)
グラフの種類:既存の縦棒グラフをそのまま使用
横軸(カテゴリ):23年Q1/23年Q2/23年Q3/23年Q4/24年Q1/24年Q2/24年Q3/24年Q4
数値:100/108/104/121/126/119/134/142
※既存のサンプル数値(四半期別売上高)は使用しないでください。上記の価格指数データに置き換えてください。
ポイント欄:「検索条件を切り替えるだけで、エリア別・時期別の価格推移を即座に確認できます。エリア全体の価格帯マップや長期的な需要推移など、目的に応じたダッシュボードを標準搭載し、担当者に依存しない判断環境を整えます。」
【追加P6】参考テンプレート:17枚目(B)ステップ型)
ページタイトル:データ収集からAI活用までの流れ
ステップ1(見出し:収集/説明):市場データの収集|主要OTA・公的統計データを継続的に収集
ステップ2(見出し:加工/説明):分析用データへ加工|エリア・時系列で統合し、すぐに使える形に整備
ステップ3(見出し:連携/説明):システム連携|ダッシュボード上で検索条件を切り替えるだけで確認
ステップ4(見出し:活用/説明):分析・AI活用|Excel出力しChatGPT・Gemini・Claude・Copilot等で分析資料を作成
【追加P7】参考テンプレート:16枚目(B)カード型)※上段3枠のみ使用、下段3枠は削除
ページタイトル:こんな方にご利用いただいています
カード1|運用代行会社:新規運営引受・リブランディング戦略・競合ポートフォリオ分析に
カード2|デベロッパー:用地取得のボリュームチェック・ブランド選定・事業化デューデリジェンスに
カード3|J-REIT/アセットマネジメント:資産評価・新規物件組み入れ検討・投資家向けレポート根拠に
【追加P8】参考テンプレート:33枚目(F)Before/After)
ページタイトル:導入効果
Before(導入前)4行:
・他社システムでCSVダウンロード+Excel加工(10数件で半日)
・公的統計データの集計に毎月2〜3人日
・分析基準が担当者ごとに異なる
・判断のスピードが上がらない
After(導入後)4行:
・対象ホテル・条件を選ぶだけで数秒でトレンド確認
・公的統計データも自動加工
・ダッシュボードで分析基準を統一
・データ加工から解放され、投資戦略の検討に集中
─────────────────────────
上記の指示書について、次の観点で確認してください。
1. 元のURLの内容を実際に分析し、指示書に反映されていない要素
(課題・差別化ポイント・導入効果・対象顧客など)が無いか確認する
2. 一般的なBtoB営業資料として、この8枚構成に欠けている要素が無いか確認する
(例:料金、会社概要・実績、対象顧客の詳細、第三者の声・導入事例、
利用イメージや画面キャプチャ など)
3. 抜けがあれば、それを補うために追加すべきページの
「タイトル案」と「盛り込むべき内容」を提示する
(既存のP1〜P8を書き換えるのではなく、新規ページとして追加する形で)
4. それぞれの指摘について、なぜその要素が必要なのかを一言添える
※検証時点(2026年8月)のモデルを使用:ChatGPT(GPT-5.6 Luna)、Gemini(3.6 Flash)、Copilot(Smart)。モデルは日々更新されるため、同じ検証でも結果は変わる可能性があります。
下記が、3つのAIによる指摘をまとめた表です。
| チェック項目 | ChatGPT | Gemini | Copilot | 指摘した AIの件数 |
|---|---|---|---|---|
| 料金プラン | ○ | ○ | ○ | 3 |
| 画面イメージ | ○ | ○ | ○ | 3 |
| 導入事例(第三者の声) | ○ | ○ | ○ | 3 |
| 利用イメージ(5ステップ) | ○ | ○ | ○ | 3 |
| 取得可能データ一覧 | ○ | ○ | ○ | 3 |
| 会社概要・信頼性 | ○ | ○ | ○ | 3 |
| 従来ツール・統計データを分けて比較 | ○ | - | ○ | 2 |
| CTA(問い合わせ導線) | - | ○ | - | 1 |
| セキュリティ・データ保護方針 | - | - | ○ | 1 |
| 導入プロセス | - | - | ○ | 1 |
| サンプルデータの明記漏れ警告 | ○ | - | - | 1 |
料金・画面イメージ・導入事例など6項目は、3つのAIすべてが指摘しました。どのAIを使っても比較的気づきやすい抜け漏れだったと考えられます。
CTA(問い合わせ導線)、セキュリティ方針、導入プロセス、サンプルデータの明記漏れについては、それぞれ1つのAIしか指摘していませんでした。
今回分かったのは、「どのAIが一番優秀か」といったことではなく、複数のAIに同じチェックをさせたことで、1つでは見落としていたかもしれない項目まで拾えたことでした。AIの指摘を一覧表にまとめると(AIに3つAIの結果を連携することで比較表にまとめてくれます)、抜け漏れの少ないチェックリストを作ることができます。
複数人でレビューしていた状態を、複数のAIで再現したような結果になりました。複数の視点で確認すると、人だけでもAIだけでも見落としやすい項目に気づきやすくなります。
レビュー2:完成した資料をチェックする
レビュー1は、AIが資料を作る前の「指示書」に対するチェックでした。
レビュー2では、Step3でできあがった、第4回でご紹介した12枚の営業資料そのものを対象に、PowerPoint Copilotの「このプレゼンテーションのレビュー」という機能を利用しました。
条件は次の通りです。
- 資料:MarketAnalyzer ご提案資料
- 範囲:プレゼン全体(全12枚)
- 聴衆:顧客の意思決定層
- 形式:商談+資料先行送付(両方)/15〜30分

Copilotは「1枚あたり約100秒で閲覧される資料」という前提まで自分で計算し、その条件を基準にレビューを行っています。
セクションごとに下記指摘がありました。
| セクション | ページ | 現状 | 最重要指摘 |
|---|---|---|---|
| 表紙 | P1 | 情報は十分だが、要点が埋もれている | 定量の一言(月2〜3人日→ゼロ)を表紙へ昇格 |
| 課題提起 | P2-3 | 網羅的だが文章が長い | 定性の羅列を、定量の痛みに変える |
| 想定ユーザー | P4 | セグメント整理は的確 | 「ご利用いただいています」の裏付け(実績値)が無い |
| 差別化・価値 | P5-6 | 資料の中核 | 比較表が自己評価のみで根拠がない。主戦場を1つに絞る |
| 機能とデータ | P7 | 最も情報密度が高い | 100秒では説明しきれない。3分類+更新頻度に絞る |
| 利用イメージ・画面 | P8-9 | ステップ構成は明快 | 画面キャプションの説明が薄い |
| 導入効果・声 | P10 | 最も購買判断に効く | 詰め込みすぎ。数字サマリーを冒頭に |
| 料金・会社概要 | P11-12 | プラン設計は良い | 会社概要で終わり、クロージングが無い(最大の構造的欠落) |
レビュー1、2ともにCTA(問い合わせ導線)の欠落を指摘
レビュー1の段階で、CTA(問い合わせ導線)の欠落に気づいていたのはGeminiだけでした。
その後、人による編集を経て完成した営業資料にも、この欠落は残っていました。
会社概要の後に、次の行動を促すページはありません。
レビュー2では、この点が最優先の改善項目として指摘されています。
1回目では一部のAIしか気づかなかった項目が、人によるレビューを経ても残り、別工程のAIレビューで再び検出されました。
同じ項目が別のレビュー工程でも繰り返し指摘されたことになります。
1回のAIレビューでは見落としていた項目も、別の工程で再度レビューすることで発見できるといった事例です。
その他の指摘から見えたこと
CTA以外にも、いくつか指摘がありました。
| 比較表の全項目が◎になっている点 | 「全項目◎は逆効果」という指摘でした。 主張の根拠が見えないと説得力を失うという、資料の表現に対する指摘です |
| 導入効果(半日→数秒、月2〜3人日→ゼロ)が資料の後半まで出てこない点 | 情報そのものではなく、情報の配置に関する指摘です。 |
| 「AWSのQuickSight基盤での提供」という仕様に関する情報が、営業資料本文には反映されていない点 | 第2回でご紹介した「重要な情報はどこかで抜け落ちる」という現象が実際に起きていました。 |
補足1:AIが組織のシステムと連携した場合
レビュー1の検証では、条件を揃えるため、公開ページと指示書のみを情報源として利用しました。
社内システムと連携したAIでは、メールやチャットなどの組織内情報も踏まえた提案が行われました。AIは公開情報だけでなく、組織内のやり取りも参考に提案できるようになっています。
どこまで連携させるかは、セキュリティや情報管理の設計とも関係します。今後の業務設計を考えるうえで検討が必要なポイントです。
補足2:ブランドガイドラインとの整合性もCopilotがチェックできる
第1回で、営業資料には企業らしさ(CI)を映すテンプレートが必要だという話をしました。そのテンプレートが守られているかどうかも、Copilotに確認させることができます。
PowerPoint Copilotには、「ブランドガイドラインに従って、不整合がないかレビューしてください」という指示に対応する機能があります。
自社のブランドガイドライン(配色・フォント・ロゴの使用ルールなど)を「ブランドキット」として登録しておけば、その基準に沿って不整合を確認できます。
今回はブランドキット未設定の状態で試しましたが、Copilotは資料内で使用されているフォントや色を基準として認識し、その基準からのズレを指摘していました。

次回予告
ここまでで、「誰が作るか」ではなく「AIが作る→人が仕上げる→AIが検査する」という流れを見てきました。
次回『Human-in-the-Loopで考えるAI・人・プログラムの役割分担【第6回AI時代の資料作成】』は、この工程の中で、人とAIがそれぞれどの役割を担っているのかを整理します。
まとめ
- 複数のAIに同じチェックを依頼すると、大部分の指摘は重なるが、一部はAIごとに異なる
- 複数AIの指摘を一覧化することで、チェックリストを作成できる
- 指示書段階と完成後の両方でレビューすることで、片方で見逃した項目をもう片方で発見できる
- 多段階レビューは、人だけでなくAI同士の組み合わせでも機能する
AIに作らせ、人が仕上げ、AIが検査する。さらに、その結果をチェックリストとして蓄積する。
品質管理とは、個人の気づきや経験だけに頼るのではなく、「気づける仕組み」を設計することだと考えています。弊社では、これをAI時代における品質管理の一つの方法として捉えています。
※【資料ダウンロード】より弊社標準の「PowerPointスライドテンプレート」をダウンロードしていただけます。ぜひご活用ください。
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