「デザインの型」から「情報スロット」としてのテンプレート化【第2回AI時代の資料作成】
2026/08/23
なぜ私たちは46種類のPowerPointテンプレートを作ったのか
はじめに:AIで営業資料を作り直したときに起きたこと
以前、ホテル向けのレベニューマネジメントを支援する「Price Analyzer」の営業資料を、GoogleのNotebookLMで作り直したことがあります。
元になったのは、全11ページのPowerPoint資料です。
全国約4万件のホテル・旅館の販売価格データ、対応媒体、料金プランに加え、「※比較施設数に上限はございません(ただしグラフ表示は最大20件まで)」といった細かな例外条件も記載された、実務者向けの資料です。
この資料をNotebookLMに読み込ませ、営業資料として再構成しました。 生成された資料は、ネイビーを基調とした洗練されたデザインで、見栄えのする仕上がりでした。また、「勘と経験からの脱却」という一貫したメッセージのもと、課題提起から解決策までが整理され、ストーリーとしても分かりやすい内容になっていました。
しかし、実際に展開しようとすると、二つの課題がありました。


- すべてのスライドが画像として出力され、編集できない
- 元資料にあった例外条件、対応範囲、料金の内訳など、一部の情報が抜け落ちている
見た目や訴求力は向上していましたが、そのまま営業資料として利用するには不安が残りました。
元資料とNotebookLM版、何が入れ替わったのか
両者を比較すると、得意分野がきれいに入れ替わっていました。
| 観点 | 元資料(PDF) | NotebookLM版 |
|---|---|---|
| 契約条件・例外条件の保持 | ◎ | △ |
| ストーリー構成 | △ | ◎ |
| 実務情報の密度 | ◎ | △ |
| 初回接触での訴求力 | △ | ◎ |
| 再利用・編集のしやすさ | ◎ (PowerPointで編集可能) | ✕ (画像化されている) |
NotebookLM版は、PriceAnalyzerを初めて知る方への説明には向いていました。しかし、契約条件や運用ルールを正確に伝えるという点では、元資料の方が適していました。
なぜ、このトレードオフが起きるのか
生成AIに要約や再構成を依頼すると、情報の圧縮が行われます。
11ページの情報を数ページにまとめるため、AIは内容を整理しながらストーリーを作ります。このとき、AIは人間が期待する「残すべき情報」の優先順位を、自動的に理解できるとは限りません。ストーリーを作る過程で、注釈・例外条件・数値の内訳といった「文脈が必要な情報」は省略されることがあります。
これはNotebookLMに限った話ではありません。
ChatGPT、Copilot、Claudeなど、どのAIを使っても起こり得る構造的な問題です。資料のストーリー化と圧縮をAIへ任せる以上、同じような情報の欠落が起こる可能性があります。
AIを変えても、同じ問題は起こり得ます。そのため、「何を残すべきか」を事前に定義することが大切です。
営業資料には「情報の型」がある
営業資料には、ある程度共通した情報の型があります。こうした型を設定しないままAIへ資料作成を依頼すると、AIはストーリーの流れに合わせて情報を取捨選択します。あらかじめ情報の型を用意しておくと、AIはそれぞれの項目を埋める形で資料を構成してくれます。
テンプレートは「デザインの型」ではなく「情報のスロット」
弊社ではその型をPowerPointテンプレートとして整理し、6カテゴリーで管理しています。
A)カラム構成
カラム構成-1024x683.webp)
要素を横並びに整理する基本形
B)ビジュアル訴求
ビジュアル訴求-1024x683.webp)
アイコンや図を使い、内容を直感的に伝える形式
C)比較・分類
比較・分類-1-1024x683.webp)
自社と他社、導入前と導入後などを項目別に比較する形式
D)データ分析
データ分析_1--1024x683.webp)
グラフや数値を使い、事実や根拠を示す形式
E)シンプル表現
シンプル表現-1024x683.webp)
情報を絞り、要点や個別条件を明確に示す形式
F)フレームワーク
フレームワーク-1024x683.webp)
SWOT分析、ピラミッド構造、課題・原因・対策など定番の形式
NotebookLMで作成した営業資料では何が抜け落ちたのか
失敗事例1:料金プランの内訳が消えた
元資料には、年間契約・半年契約・1か月契約の金額に加え、追加IDの単価まで記載されていました。しかし、NotebookLM版ではその情報が抜け落ちていました。
サービスの価値を伝えるストーリーの中では、料金の細かな内訳は優先順位が下がりやすいためです。
そこで、「E)シンプル表現」の「単票形式」テンプレートを追加しました。ストーリーに埋もれやすい情報を独立して残すためです。

失敗事例2:媒体別の対応範囲が消えた
元資料では、媒体ごとに取得できる情報や対応範囲の違いを説明していました。
しかしNotebookLM版では、媒体のロゴ一覧は残っていても、それぞれの違いは表現されていませんでした。
AIは共通点をまとめることは得意ですが、細かな差異は省略されやすくなります。
そこで、「C)比較・分類」の「比較型」テンプレートを追加しました。比較対象を並べて条件の違いを残せるようにしたのです。

失敗事例3:例外条件・注記が消えた
元資料には、「比較施設数に上限はありません。ただし、グラフ表示は最大20件まで」
という注記がありました。
しかしNotebookLM版には引き継がれていませんでした。
注記は目立つ情報ではありませんが、正しくサービスを理解してもらうためには重要です。
そこで、「F)フレームワーク」の「リスク一覧」テンプレートを追加しました。条件や制約などを記載する専用の受け皿です。

結果、46種類になった
PowerPointテンプレートは、最初から「46種類あれば十分」と考えたわけではありません。実際の案件で、「この情報が抜け落ちた」と気づくたびに、必要な型を追加してきました。
- 料金が消えれば単票形式を追加する
- 比較条件が消えれば比較型を追加する
- 注記が消えればリスク一覧を追加する
そうした改善を繰り返した結果が、現在(2026年8月時点)の46種類です。
この46種類は完成されたカタログではなく、情報の抜け漏れに気づくたびに型を追加してきた、その蓄積の記録です。
今後も新たな課題が見つかれば、テンプレートを追加しますし、営業資料、調査報告書、提案書など、成果物の目的に応じて細分化することも想定しています。
次回予告
次回は、eSURVEYの「MarketAnalyzer」紹介ページを題材に、実際にAIへ要約させながら、
- どの情報を残すべきか
- どのテンプレートへ配置するか
をご紹介します。
まとめ
- 生成AIに資料の再構成を任せると、ストーリー性は高まるが、注記や料金内訳などの実務情報は抜け落ちることがある
- 重要なのはAIを選ぶことではなく、残すべき情報を事前に定義すること
- テンプレートはデザインではなく、情報の抜け漏れを防ぐスロットとして機能する
- 46種類という数字は、抜け漏れに気づくたびに改善を重ねた結果である
AIによる資料生成の品質は、プロンプトだけでなく、AIに渡す情報構造の品質にも左右されます。
弊社が整備しているのは、デザインテンプレートではありません。AIによる情報の省略を防ぐための「情報構造のテンプレート」です。
※【資料ダウンロード】より弊社標準の「PowerPointスライドテンプレート」をダウンロードしていただけます。ぜひご活用ください。
お問い合わせ・資料請求
各種サービスについてのご相談
その他お問い合わせはこちら
観光向けサービス・調査サービスの
資料ダウンロードはこちら