Human-in-the-Loopで考えるAI・人・プログラムの役割分担【第6回AI時代の資料作成】

AI時代の資料作成AI時代の業務設計

2026/08/28

Human-in-the-Loopとは何か。営業資料作成の実例をもとに、プログラム・単体AI・複数AI・人の役割分担を整理し、AI時代のPMに求められるオーケストレーションの考え方を解説します。

PMの仕事は「誰がやるか」ではなく「何に任せるか」を判断すること

前回までのおさらい

第1回でCIをテンプレートに反映、第2回で情報構造をテンプレート化、第3回でAIに指示書を作らせて資料を生成し、第4回で人が内容を確認・追加しました。そして、第5回では複数のAIによるチェックと、Copilotによる完成後のレビューやブランド整合性の確認まで行いました。

実際の役割分担を、表にしてみる

改めて第1回から第5回までを並べてみると、「誰が構成案を作ったか」「誰が抜け漏れをチェックしたか」「誰が最終的にゴーサインを出したか」など工程によって、単体のAIに任せたところもあれば、複数のAIで確認したところ、人が判断したところもあります。

最初からきれいに設計していたというより、作りながら「ここは人でなくてもよいのでは」「ここは複数の目で見た方がよい」と判断していった結果、下の表のような役割分担になりました。

工程担当
ページ構成案の作成(第3回)AI(Claude)
抜け漏れのチェック(第5回・レビュー1)複数のAI(ChatGPT・Gemini・Copilot)
内容の確認・不足ページの追加(第4回)人(校正担当者)
完成後のレビュー(第5回・レビュー2)AI(Copilotのレビュースキル)
ブランド整合性の確認(第5回・補足2)AI(Copilotのブランドチェック)
最終的な公開判断人(営業担当・意思決定者)

この表は、工程ごとに「AIが作る」「AIがチェックする」「人が確認する」という役割を配置していった結果、作業を細かく分けて担当を決める、プロジェクト管理に近い整理になっています。

AIを使う工程と使わない工程を分けて考える

上記の表だけを見ると、AIを使う工程を整理しているように見えます。ただ、実際に整理してみると、AIを使うかどうかだけでは足りませんでした。

例えば、記事づくりの裏側では、次のような作業も並行して発生しています。

  • テンプレートの内部構造(枠の座標・現在の文言)を取得する作業 → プログラム(Pythonでpptxファイルを読み取る)
  • 完成したスライドをスクリーンショット化して記事に貼り込む作業 → プログラム(PDF変換・画像書き出し)
  • Wordファイルの一部分だけを書き換える作業 → プログラム(文書のXMLを直接編集する)
  • 元ページの課題・差別化ポイントを読み取り、指示書としてまとめる作業 → AI(言語化・要約が必要な工程)
  • 抜け漏れがないか、複数の視点で確認する作業 → AI(判断に幅がある工程を、複数走らせて補い合う)
  • 公開してよいかどうかの最終判断 → 人(責任を伴う意思決定)

「座標を読む」、「画像に変換する」、「文字列を置き換える」こうした処理は、AIに頼るよりプログラムで処理した方が安定します。
一方で、元ページを読んで「どこに課題があるか」「何を差別化ポイントとして見るか」を判断する工程は、正解が一つではありません。ここはAIに手伝わせる意味があります。

そして、資料を公開してよいかの責任を伴う判断は、最後まで人に残していました。

AIを使う工程と、あえて使わない工程を分けて考える必要がありました。

これを担当ごとに整理すると、次のようになります。

担当得意な作業の性質具体例(本連載の例)
プログラムルールが明確で、同じ手順を正確に繰り返す処理座標取得、PDF/画像化、XMLの直接編集
単体AI文章の構造化、要約、初稿・たたき台の作成ページ構成案の作成、課題・差別化ポイントの抽出
複数AI多角的な視点チェック、見落とし防止、レビュー結果の突き合わせChatGPT / Gemini / Copilot によるクロスレビュー
文脈を踏まえた微調整、専門的判断、公開・最終責任内容確認、不足ページの追加、最終的な公開意思決定

Human-in-the-Loopは、AIの監視係という意味ではない

ここでAIの自動化の話題でよく使われる「Human-in-the-Loop」にも触れておきます。

弊社ではHuman-in-the-Loopを、「AIに全部やらせて最後に人が見る」という意味ではなく、人が判断すべき場所を最初から工程に組み込んでおく考え方だと捉えています。

誤解されやすいのですが、「AIの作業を人間が一つひとつ見張る」という意味ではありません。第4回の校正担当者による確認も、最終的な公開判断も、AIが処理したすべての『行』を人が読み直したわけではなく、「ここだけは人が判断する」と決めていた箇所だけ人が担っていました。

AIと人間が単純に「作る→直す」を往復しているのではなく、人が判断すべきポイントを、最初から工程の中に置いておく。これが、私たちなりのHuman-in-the-Loopの使い方です。

業務を切り分けることで、人の「役割」も拡張される

今回のように工程を細かく分解し、AIやプログラムに、まず60点くらいのたたき台を作らせると人間側の働き方にも変化が生まれます。

第4回でご紹介した「営業経験のない校正担当者が、テンプレートを頼りに営業資料の仕上げに参加できた」という事例がまさに該当します。

AIの話になると、人員削減や工数削減に目が向きがちですが、私たちが実感しているのは「業務のボトルネックの解消」と「非専門職の職域拡張」です。

今回の事例では、AIが作業の土台を担うことで、これまで専門外だった校正担当者も資料作成の一部を担うことができました。

結果として、専門職は細かい作業確認に時間を取られにくくなり、本当に見なければいけない判断に時間を使えるようになりました。

この記事自体も同じ設計で作られている

ここまで営業資料を題材に話してきましたが、このシリーズの記事そのものも、同じプロセスで作られています。

  • 原稿作成責任者がシリーズの構想を作成(人)
  • 原稿作成責任者が個別原稿を構成(人)
  • 生成AI(Claude)が初稿を書く(AI)
  • 原稿作成責任者がチェックする(人)
  • 生成AI(ChatGPT)がレビューする(AI)
  • 原稿確認担当者がチェックし修正する(人)
  • 原稿作成責任者が最終的に判断し、公開する(人)

PM(プロジェクトマネージャー)の仕事は、何が変わったのか

従来のタスク

 「誰(どのメンバー)に振るか」を管理

AI時代のタスク

「プログラム / AI(単体/複数) / 人のどれに割り当てるか」を設計(オーケストレーション)

PMはもともと、工程・責任・品質・リスク・意思決定を設計・管理する仕事でした。

ただ、AIを使うようになると、PMが考える対象が少し変わります。

従来は「誰にこの仕事を任せるか」を考えればよかったものが、「この工程はプログラムか、AIか、人か」という選択肢が増えました。さらにAIについては、「1つのAIに任せるか」「複数のAIに任せるか」という判断も加わります。

つまり、PMが考える対象は、人の担当分けだけではなくなります。
どの工程をプログラムに任せ、どこでAIを使い、どこから人が判断するのか。
その線引きをプロジェクトの中で決めることも、AI時代のPMの仕事になっていくと考えています。

シリーズ全体を振り返る

実際にやったこと今振り返ると
第1回CIをテンプレートに反映仕上がりの基準を決めた
第2回情報構造をテンプレート化資料の型を整えた
第3回AIに指示書を作らせ、資料を生成作業を自動化した
第4回人が内容を確認・追加人が内容を確認した
第5回複数AIでチェック、AIがレビュー複数の目で確認する仕組みにした
第6回全体を振り返る役割分担を整理した

第1回で反映したCI(コーポレートアイデンティティー)は、第5回の補足2でご紹介したように、AI自身で再チェックしています。企業らしさを型に込めるところから始まり、その型が守られているかをAIでも確認できるようになりました。

次回シリーズ最終回の『AI時代の業務設計(AIを活用してPDCAを回す方法)【第7回AI時代の資料作成】』では、「営業資料を作るとき、また同じ作業を繰り返すのか?」をテーマに資料作成におけるPDCAの回し方をご紹介します。

まとめ

第1回から第5回まで、工程ごとに担当が入れ替わっていました。そこに関わっていたのは、「プログラム」、「単体のAI」、「複数のAI」、そして「人」です。

この6回でお伝えしたかったのは、生成AIの便利な使い方だけではありません。むしろ、AIを使う前に、仕事そのものをどう分けるか。どこをプログラムに任せ、どこをAIに任せ、最後にどこを人が判断するのか。
その線引きを考えることが、AI時代の業務設計の出発点になると考えています。

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