生成AIは旅前のGoogle検索を置き換えるのか|ホテル・旅館のカスタマージャーニーと集客戦略【顧客接点設計 第2回】

2026/10/02

生成AIは旅前のGoogle検索を置き換えるのでしょうか。読売広告社と宿研の調査をもとに、旅行者がAI、Google検索、Googleマップ、SNSなど複数の情報源を行き来する「蜘蛛の巣型カスタマージャーニー」を解説。AI時代の旅前接点設計の考え方を整理します。

2つの調査から見た「AI時代の蜘蛛の巣型カスタマージャーニー」

はじめに

第1回では、旅前の情報収集は「認知→比較→予約」という一本道ではなく、SNS、Google、OTA、口コミ、公式サイトなど複数の接点を行き来する「蜘蛛の巣型」であることを説明しました。
今回は、その蜘蛛の巣に生成AIという新しい接点が加わることで、構造がどのように変化しているのかを見ていきます。

近年、ChatGPTやGemini、Copilotなどの対話型AIを使って、旅行先や宿泊施設を探す人が現れています。そこで本稿では、読売広告社と宿研による2つの調査を取り上げます。前者からはAIがどの段階で使われているかを、後者からはAIの提案後に旅行者がどの情報源を確認したかを確認し、旅前の情報探索に生じている変化を考察します。

なお、本稿で参照するのは、読売広告社「AI検索時代の生活者行動変化に関する調査」と、宿研「旅行計画での生成AI活用実態調査」です。

調査① 読売広告社「AI検索時代の生活者行動変化に関する調査」とは

読売広告社は2026年、生活者がAIに実際にどのような質問をしているのか、そしてAIの回答が意思決定にどの程度影響しているのかを調査しました。

調査名AI検索時代の生活者行動変化に関する調査
調査手法インターネットリサーチ(Fastaskパネル)
調査時期2026年6月15日〜19日
調査対象者AI検索・生成AIを月1回以上利用し、
直近1年以内に当該カテゴリ検討時にAIを利用した20〜60代男女
サンプル数事前調査15,402サンプル/本調査4,845サンプル(ユニーク2,444人)
※各カテゴリ約440名
有効自由回答1,959件(プロンプト=意図分析の対象)
対象カテゴリ自動車/住宅・不動産/金融商品/家電・PC/旅行/美容/
ヘルスケア/食品・飲料/日用品・トイレタリー/ゲーム/ギフト
カテゴリ別 利用率×影響度「読売広告社 AI検索時代の生活者行動変化に関する調査」
【旅行】 有効自由回答数229件/利用率35.3%(最多)/影響度5.16
【金融商品】 有効自由回答数184件/利用率30.1%/影響度5.29
【家電・PC】 有効自由回答数205件/利用率29.8%/影響度5.52(最高)
【ヘルスケア】 有効自由回答数133件/利用率29.2%/影響度5.16
【食品・飲料】 有効自由回答数187件/利用率28.8%/影響度5.33
【美容】 有効自由回答数214件/利用率24.0%/影響度5.38
【自動車】 有効自由回答数131件/利用率23.0%/影響度4.74
【日用品・トイレタリー】 有効自由回答数177件/利用率22.8%/影響度5.04
【ギフト】 有効自由回答数187件/利用率21.3%/影響度5.28
【ゲーム】 有効自由回答数166件/利用率19.9%/影響度4.89
【住宅・不動産】 有効自由回答数146件/利用率18.6%(最低)/影響度4.96
AI利用率の平均 25.7%
影響度の平均 5.16

旅行分野は11カテゴリの中でAI利用率が最も高く、35.3%でした。また、旅行では希望条件を伝えて旅程全体を設計させたり、複数地点を考慮したルートを提案させたり、複雑な条件で宿泊施設を探したりする使い方が確認されています。

AIが強いのは「候補を比較すること」だけではない

同調査全体では、「何を選べばよいかわからない時」において、AIが意思決定に与える影響が最も大きいことがわかりました。
一方で、「選択肢の把握」のフェーズでは利用率が高いものの、意思決定への影響は比較的低い段階にとどまっています。

フェーズ別 利用率×影響度「読売広告社 AI検索時代の生活者行動変化に関する調査」
①漠然・課題/利用率28.9%/影響度5.65
②選択肢の把握/利用率46.5%/影響度4.97
③比較検討利用率/46.5%影響度5.18
④意思決定直前/利用率32.4%影響度5.39
⑤利用開始/利用率20.7%影響度5.21
⑥利用中の課題/利用率15.3%影響度5.14
⑦再購入・継続/利用率8.6%影響度4.12

検索では、知りたい対象や条件をある程度決めてから情報を探します。一方、AIには、「どこへ行くか決まっていない」「複数の希望に合う旅行先を知りたい」「この観光地を回るなら、どこに泊まればよいか」といった相談もできます。AIは、検索条件が固まる前の段階から、旅行者の希望を整理し、候補を考えるために使われていると考えられます。

特に旅行では、希望条件を伝えて旅程全体の設計を委ねる使い方が浸透しているほか、複数の経由地を渡したルート計算や、複雑な条件の宿探しをさせるなど、AIがツアープランナーとして使われていますと報告されています。

参照:読売広告社「AI検索時代の生活者行動変化に関する調査」

では、実際にAIを利用した旅行者は、その後どのように行動しているのでしょうか。

調査② 宿研「旅行計画での生成AI活用実態調査」とは

宿研は2026年1月、直近の国内旅行計画で生成AIを利用した20~69歳の男女630人を対象に、AIから提案を受けた後の行動を調査しました。

調査名旅行計画で生成AIを使った630人の行動調査(第3回)
調査企画株式会社宿研
調査協力株式会社クロス・マーケティング(QiQUMO)
実施時期2026年1月
調査対象直近の国内旅行計画で対話型AI(ChatGPT・Gemini等)を実際に使用した630人
調査手法インターネット調査(スクリーニング調査:8,000人 → 本調査:630人)

この調査の特徴は、旅行計画でAIを使った後に旅行者が実際に何をしたのかを追っている点です。

Q.AIが提案した場所への訪問状況(単一選択)

旅行計画で生成AIを使った方の中で、AIが提案した場所を実際に訪問した人は54.6%でした。

Q.どの提案場所に訪問したか(複数選択)

AIが提案した場所を実際に訪問した人の中で、「宿泊施設」へは33.7%が訪問していました。旅行計画で生成AIを使った方でみると、18.4%(実際に行った[54.6%]×宿泊施設[33.7%])となっています。

Q.AIの提案後に、よく確認した、見に行った情報源(確認頻度の多かったもの最大3つ)

『宿泊先探しを目的にAIを使い始めた』『それ以外の目的』のどちらも、「Googleマップ”」「ネット検索(Google検索、Yahoo検索等)」「SNS」がTOP3でした。

※本調査は「AI提案後によく確認した情報源(最大3回答)」を尋ねたものです。本結果は確認頻度の高い情報源を示しており、閲覧順序や意思決定への影響度を示すものではありません。Googleマップ・ネット検索・SNSはいずれの利用目的でも上位となっており、旅行者が複数の情報源を横断して確認している様子がうかがえます。

宿研の調査では、AI利用後にネット検索やGoogleマップなどを確認したという回答が見られます。ただし、この調査結果だけでは、これらの情報源をどの順番で確認したのか、また予約決定にどの程度影響したのかまでは分かりません。

※1.本調査は「AI提案後によく確認した情報源(最大3回答)」を尋ねたものです。Googleマップ、ネット検索、SNSが上位となっていますが、これは旅行者が複数の情報源を横断的に確認していることを示す結果であり、閲覧順序や予約判断への影響度を示すものではありません。本記事では、単一チャネルではなく複数チャネルを行き来する『蜘蛛の巣型』の情報収集行動の参考データとして掲載しています。

※2.『それ以外の目的』については、AI利用開始時の目的が「旅行の行き先探しや、飲食店・観光スポット探し」

※3.『宿泊先探しを目的にAIを使い始めた』はn数が90票(14.7%)、『それ以外の目的』はn数が540票(85.7%)となっていますが、スクリーニングによる割付の結果もしくは設問による分類などはプレスリリースからは判断ができなかったため、本割合については参考データとしてあつかっています。

参照:株式会社宿研 旅行計画で生成AIを使った630人の行動調査

AIは蜘蛛の巣を消さず、新しい接点を加えている

この結果は、第1回で整理した「蜘蛛の巣型カスタマージャーニー」ともつながります。生成AIが普及しても、GoogleやOTAなど従来の接点が不要になるわけではありません。宿研の調査では、旅行者がAIの提案後に別の情報源を確認していることが示されています。

カスタマージャーにおける旅行計画段階における顧客の情報探索構造を表した図。 顧客はSNS、Google、AI検索、OTA、口コミ、公式サイトなどを行き来しながら宿泊施設を比較検討する。 認知→比較→予約という直線的な行動ではなく、複数接点を往復する蜘蛛の巣型の構造を示している。

つまり、旅行者の情報探索が、Google→OTA→予約という単純な流れに変わったわけでも、AI→予約という新しい一本道になったわけでもありません。

AIの提案後にGoogle検索、Googleマップ、SNSなど複数の情報源が確認されていることから、AIを含む複数の接点による情報探索について考えることができます。

ホテルDXの着眼点

1

「AI対策」だけでは不十分

宿研調査では、AIの提案後に、よく確認する情報源として「Googleマップ」「ネット検索(Google検索、Yahoo検索等)」「SNS」が挙げられています。

この結果から考えると、AI時代のホテルDXで重要なのは、AIそのものへの対応だけではありません。AIの提案後に旅行者が確認する情報接点を整えておくことも重要になります。第1回で整理した、情報の整合性、プランの整合性、価格情報の整合性、口コミ・レビューといった項目も、AI時代には「検索対策」だけではなく、AIから流入した旅行者が確認する情報環境として考える必要があります。

2

旅程に組み込まれるための情報整備

読売広告社の調査では、AIが複数地点を考慮したルート提案や旅程全体の設計に利用されていることが確認されています。この使われ方を考えると、ホテル側が発信する情報も「自館の魅力」だけでは十分ではありません。旅行者が実際に組み立てる旅程の中で、自館がどこに位置するのかという情報も重要になります。

例えば、次のような情報です。

  • 主要観光地からの移動手段と所要時間
  • 周辺の飲食店・観光スポットとの位置関係
  • 主要駅・空港からのアクセス方法
  • 観光地を組み合わせた場合の移動時間

こうした情報を公式サイトなどに整理しておけば、旅行者が「この観光地と組み合わせる宿泊先」を検討する際の材料になります。ただし、情報整備によってAIに選ばれやすくなるかどうかは、今回の調査からは確認できません。

3

口コミを継続的に管理する

旅行者はAIの提案後にGoogleマップやSNSなどで情報を確認しており、口コミも重要な確認先の一つです。施設側には、評価を確認するだけでなく、低い評価への返信や改善内容の発信を含め、口コミを継続的に管理することが求められます。

まとめ 生成AIは旅前のGoogle検索を置き換えるのか

読売広告社の調査では、旅行は調査対象11カテゴリの中でAI利用率が最も高く、旅程全体の設計や複雑な条件での宿探しなどにもAIが使われています。

一方、宿研の調査では、「宿泊先探しを目的にAIを使い始めた人」と「それ以外の目的で使い始めた人」のどちらでも、AIの提案後によく確認した情報源の上位3項目は「Googleマップ」「ネット検索」「SNS」でした。

ただし、この調査は「確認頻度の多かった情報源」を最大3つまで尋ねたもので、閲覧順序や最終的な意思決定への影響を示すものではありません。それでも、AIで提案を受けた後の情報収集が、AIだけで完結していないことは確認できます。

2026年時点においては、旅行者の情報探索に、AIという新しい入口が加わったと捉える方が適切です。

今回の調査結果からは、AIの提案後にもGoogle検索、Googleマップ、SNSなど、複数の情報源を確認した回答者がいることが分かります。第1回で整理した「蜘蛛の巣型カスタマージャーニー」に、AIという新しい入口を加えて考えることができます。

ホテル側に求められるのは、AI対策だけでなく、AIの提案後に旅行者が確認するGoogleマップ、SNS、OTA、公式サイトなどで、施設情報や宿泊プラン、価格、アクセス、周辺観光、口コミへの対応が食い違わない状態をつくることがこれまでよりも求められます。

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